コレステロールがライソゾームの酸性キャパシティを低下させる

ライソゾーム酸性リパーゼを欠損させた細胞(LIPA遺伝子欠損細胞、酸性リパーゼ欠損症のモデル)においては、細胞内のコレステロールの代謝が障害され、コレステロールが蓄積しています。今回この細胞を解析した結果、ライソゾームが肥大化し、ライソゾームの酸性を保持する能力が低下することでオートファジーにおける分解能力が低下することが示されました。このライソゾームの酸性維持能力低下は、遺伝的に欠損がない(正常)細胞において培養液中に通常の2倍程度の濃度のコレステロールを添加することによっても引き起こされます。

本研究成果は、ライソゾーム病である酸性リパーゼ欠損症(Wolman病・コレステロールエステル蓄積症(CESD))の病態メカニズムの一端の解明となるのみならず、高コレステロール血症のような生活習慣病がライソゾーム機能に影響する可能性を示唆します。オートファジーの低下はエイジングなど幅広くの生命現象に関連する意味でも重要です。

Impaired lysosomal acidity maintenance in acid lipase-deficient cells leads to defective autophagy.
Moriwaki T, Terawaki S, *Otomo T.
J Biol Chem, 2024 Feb 12:105743. doi: 10.1016/j.jbc.2024.105743. Online ahead of print.
PMID: 38354786